スマートコントラクトとは?基礎知識と具体的な活用事例解説

投稿者: Akira.Ito 投稿日:

イーサリアム(ETH)など、多くの暗号資産(仮想通貨)にはスマートコントラクト機能が実装されており、ブロックチェーン上で自動的に契約を行うことが可能です。 また、特定の条件を満たすことで報酬が支払われる仕組みは、さまざまな場面での活用が期待されています。

スマートコントラクトの基本的な特徴やメリット、デメリットを踏まえたうえで、どのような活用方法があるのかを把握しておきましょう。

スマートコントラクトの基本ポイントを詳しく解説します。

スマートコントラクトの特徴

スマートコントラクト1

スマートコントラクトがどのような場面で役立つのかを考えるうえで、基本的な特徴や仕組みをおさえておくことが大切です。

スマートコントラクトの基本となる部分を解説します。

スマートコントラクトとは?

「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーン技術を用いて自動的に契約を実行してくれる仕組みのことです。イーサリアム(ETH)をはじめ、多くの暗号資産(仮想通貨)で実装されている機能であり、汎用性の高さに注目が集まっています。

契約内容とその契約を履行するための条件をあらかじめプログラムとして組んでおくことで、仲介者を必要とせず契約が自動的に実行されるのが特徴です。

スマートコントラクトの機能は自動販売機に例えられることがあります。

購入者がほしい商品を選んで代金を投入すれば、自動的に商品を受け渡すプログラムが実行される仕組みと似ており、スマートコントラクトの特徴を端的に示しているといえるでしょう。

サービスの管理者がいなくても、ユーザー同士がやりとりを行える仕組みとして機能する点が魅力的だといえます。

また、取引の内容はP2Pネットワーク上でブロックチェーン上に記述されるため、契約の透明性が確保できます。 取引記録の改ざんなどが行えないので、安全性と信頼性を担保した取引を実行できる仕組みといえるでしょう。

スマートコントラクトの仕組み

スマートコントラクトの概念は、1994年にニック・スザボという暗号学者によって提唱されました。その後、イーサリアム(ETH)の考案者であるヴィタリック・ブリテンがブロックチェーン技術を活用して開発したものです。

前述のとおり、契約内容と契約の実行条件を事前にプログラミングしておけば、自動販売機のようにシンプルな仕組みで相手との取引が行えます。当事者同士で面倒な契約書を交わす必要がなくなるため、事務的なコストや時間が軽減できます。

一方で、ブロックチェーン技術を基にしている機能であるため、一度書き込んだデータを簡単に変更できない点もあります。契約内容に間違いが見つかっても後から変更することが難しいため、慎重に利用することが必要です。

イーサリアム(ETH)について詳しくはこちらの記事で紹介しています。

暗号資産・仮想通貨 イーサリアム(ETH)の特徴と仕組みを紹介!!

スマートコントラクトのメリット・デメリット

メリット・デメリット

スマートコントラクトの機能は、使い方次第で取引を円滑に進める手段として役立ちますが、気をつけるべきポイントもあります。

ここでは、どのようなメリットやデメリットが備わっているのかを見ていきましょう。

活用することで得られるメリット

スマートコントラクトでは、ブロックチェーン技術が使われているので、契約内容が改ざんされにくいというメリットがあります。一度書き込んだデータを書き換えるためには膨大な労力が必要となりますし、過去のデータがすべてネットワーク上に記録されているので改ざんがあれば簡単に見つけられます。

また、ブロックチェーン技術の特性である管理者を介することなく、契約内容を自動的に実行できる点も大きなメリットです。契約を交わしたり実行したりする過程において、第三者を挟まずに行えるため、取引期間の短縮やコストの削減につなげられます。

従来であれば、1つの契約を完了させるまでに多くの手続きが必要であったことも、スマートコントラクトを活用すれば省力化できるのです。

システムを管理するために大容量のサーバーを設置する必要もないので、不動産業界や金融業界、行政などの公的機関において注目度が集まっています。

注意が必要なデメリット

スマートコントラクトは、多くの暗号資産(仮想通貨)が抱えている課題である「スケーラビリティ問題」を克服できるのかが懸念されています。スケーラビリティ問題とは、1つのブロックに書き込める取引データ(トランザクション)に限りがあるため引き起こされる問題を指します。

ブロックの容量一杯にデータが書き込まれてしまうと、データの処理速度が落ちて処理能力が低下する懸念があります。そのため、スマートコントラクトの機能を利用する人が増えれば増えるほどデータのやりとりが多くなり、それに伴って処理にかかる時間が増える恐れがあると考えられているのです。

つまり、普及するほどかえって使いづらくなる懸念が生じているのが現状です。トランザクションが増加し、利用するための手数料が高くなれば、本来メリットとしてある部分がうまく機能しなくなります。

また、プライバシーの保護やハッキング対策といった面でもまだ十分ではなく、機能面での脆弱性が指摘されている部分もあります。 スマートコントラクトが普及していくためには、こうしたデメリットを一つずつ克服していく必要があることをおさえておきましょう。

スマートコントラクトの将来性

将来性

スマートコントラクトには、メリットとデメリットの両面がありますが、今後の動き次第では懸念点が払拭される可能性も十分あります。

スマートコントラクトの将来性について、4つの視点から解説します。

1. 4つのアップデート

スマートコントラクト機能が実装されているイーサリアム(ETH)は、4つのアップデートを経て完成されることが決まっています。それぞれのアップデートの時期や内容をまとめると以下のとおりです。

■Frontier(フロンティア)
2015年7月に実施され、イーサリアム(ETH)が開発された当初に発生したバグなどを修正するためにアップデートが行われました。

■Homestead(ホームステッド)
2016年3月に実施され、取引が安定的に行われるように調整され、マイニングの難易度や取引手数料の見直しが行われました。

■Metropolis(メトロポリス
アップデートが2回に分けられ、2017年9月に「ビザンチウム」、2019年3月に「コンスタンティノープル」が行われました。マイニング報酬の見直しやプライバシー保護の実装などが実施されています。

■Serenity(セレニティ)
2020年12月から進められており、4段階に分けてアップデートが進められています。「イーサリアム2.0」とも呼ばれておりコンセンサスアルゴリズムの変更で処理速度の向上を目指しています。

すべてのアップデートが完了することによって、イーサリアム(ETH)はよりスケーラブルで、安全で、持続可能なものになると期待されています。今よりも多くの技術者がイーサリアム(ETH)を利用したDAppsの開発に携わることになり、さまざまな諸問題を解決してくれると注目が集まっているのです。 イーサリアム2.0が正式にリリースされることで、スケーラビリティ問題が大幅に改善されれば、より安定的なネットワークとして利用可能となります。スマートコントラクトの本来の持ち味である低コストで契約内容を自動的に実行できるという部分が、多くの人に利用されるきっかけとなるでしょう。

2. イーサリアム(ETH)企業連合の存在

イーサリアム(ETH)にはスマートコントラクト機能が備わっているため、多くの企業が事業の新たな展開として活用し始めています。2017年に設立されたイーサリアム(ETH)企業連合(EEA:Enterprise Ethereum Alliance)は、スマートコントラクトをビジネス領域で活用することを目的としている組織です。

イーサリアム(ETH)企業連合には、JPモルガンやMicrosoft社、トヨタ自動車株式会社など、世界的にも著名な企業が500社以上参加しており、多くの企業が活用を試行しています。大企業がビジネスで活用していく流れが進んでいけば、イーサリアム(ETH)そのものの信頼性を担保することにつながるでしょう。

特定の業界だけでなく、幅広いジャンルで活用されることで、多くの優秀な人材が流入してくることが見込まれます。スマートコントラクトを実生活のレベルで落とし込んでいくことで、実用性に耐えられる仕組みが整ってくると期待されているのです。

3. ICOとして利用される機会が増えている

ICOとは、「Initial Coin Offering」を略したものであり、暗号資産(仮想通貨)による資金調達のことを指します。資金を集めようとする人や組織が独自の通貨を発行し、投資家たちは出資を行う代わりに発行された通貨を低価格で受け取る仕組みのことです。

イーサリアム(ETH)上ではERC-20というトークンを作成することが可能なので、資金を調達したい人は一からトークンを作成する手間を省けます。ERC-20を使ったトークンであれば、同じウォレット内での管理が行えるため、トークンの管理や保管に手間がかかりません。 おもなERC-20トークンとしては、OMG(OmiseGo)やBAT(BASIC ATTENTION TOKEN)などがあります。

ERC-20について詳しくはこちらの記事で紹介しています。

ERC-20とERC-721の違いについて解説!

4. DeFi市場の成長

DeFiとは、「Decentralized Finance」のことであり、日本では分散型金融といわれています。ブロックチェーン技術を活用すれば、中央集権的ではない金融システムを構築することが可能であり、コスト削減や手続きの省力化といった面で大きなメリットがあります。

取引はユーザー間によって行われるため、金融仲介者を挟む必要がありません。スマートコントラクト機能が実装されているイーサリアム(ETH)が多く利用されており、自律的な資産管理が行えます。

DeFiの分野においては、分散型取引所(DEX)、レンディング・プラットフォームなど、さまざまな活用がすでに行われており、今後も利用の拡大が期待されています。

DeFi市場の成長に合わせてイーサリアムが多く利用されれば、必然的にスマートコントラクト機能が多く使われるでしょう。
ジャンルにとらわれず、さまざまなビジネスシーンで利用される機能だからこそ、スマートコントラクトには高い将来性が備わっているといえます。

DeFi(分散型金融)について詳しくはこちらの記事で紹介しています。

分散型金融「DeFi」の基本的な仕組みとは?投資方法・注意点もわかりやすく解説

スマートコントラクトの活用事例

活用事例

スマートコントラクトは一部のユーザーだけが利用するものではなく、実生活において多くの場面で使われています。

ここでは、実際に活用されている事例を見ていきましょう。

1. DeFi(分散型金融)

DeFiはスマートコントラクト機能を用いており、ブロックチェーン上で金融サービスやエコシステムを展開しています。日本では分散型金融とも呼ばれており、従来銀行や証券会社が行っていた金融システムに代わり、ブロックチェーン技術を使って新たに展開する仕組みです。

これまでの金融システムでは、送金を行ったり資金を貸し付けたりするためには、金融仲介者を必要としていました。多くの手続きが必要なものほど、時間やコストがかかっていたため、金融の利便性という点では課題があったといえます。

しかし、DeFiの登場によって金融サービスを仲介する第三者を必要とせず、ユーザー同士が直接取引を行えるようになりました。取引のすべてがブロックチェーン上に記録され、取引データを簡単に書き換えることはできません。

さらに、スマートコントラクト機能によって、借り手に資金を貸し付けたり利息を受け取ったりすることができるようになりました。DeFi市場ではさまざまなアプリケーションが生み出されているので、スマートコントラクトの普及に一役買っています。

DeFi(分散型金融)について詳しくはこちらの記事で紹介しています。

分散型金融「DeFi」の基本的な仕組みとは?投資方法・注意点もわかりやすく解説

2. Etherisc(イーサリスク)

Etheriscは、スマートコントラクトを利用した「分散型保険プラットフォーム」のことです。従来の保険の仕組みと大きく異なる点は、保険金の支払い可否の判定や支払いの実行を自動的に行えることが挙げられます。

保険金の支払いに関する手続きをスマートコントラクトによって自動化できるので、保険会社としても人件費の削減につながります。

また、ユーザーとしてもその分だけ割安な保険料で保険サービスを利用できるため、双方にとってメリットが大きいといえるでしょう。

実際の導入例としては、「Flight Delay Insurance」という航空便が遅延したときに補償が受けられる保険に活用されています。契約の締結と履行はスマートコントラクトが得意とする部分なので、将来的には保険分野においてさらに利用拡大が見込まれています。

また、スマートコントラクトは不動産登記や納税といった面でも活用することができるので、保険商品と組み合わせた新たなサービスの展開も期待されているのです。

3.CryptoKitties(クリプトキティーズ)

CryptoKitties(クリプトキティーズ)は、Web上で猫を育成するブロックチェーンゲームです。ゲーム内で育てた猫のキャラクターを他のユーザーと売買することができます。

売買においてはスマートコントラクト機能が使われており、安心して暗号資産(仮想通貨)による取引を行うことが可能です。シンプルなゲームシステムと可愛い猫のイラストが人気で、普段はあまりゲームをプレイしない人でも手軽に楽しむことができます。 クリプトキティーズのように、ブロックチェーン技術やイーサリアム(ETH)を利用したゲームは数多く生まれています。ゲーム内で利用できるキャラクターやアイテムの取引が活発に行われる流れができており、エンターテインメントの分野においても利用者数が増加しているのです。

ブロックチェーンとの関係

ブロックチェーン

スマートコントラクトの機能はブロックチェーン技術を基にしていますが、そもそも2つの仕組みは役割が異なる部分があります。

ここでは、どのような違いがあるのかを見ていきましょう。

ブロックチェーンの役割

ブロックチェーン技術はビットコイン(BTC)などの暗号資産を根本から支えるものであり、過去の取引データをすべて記録してネットワーク上で公開することに強みを発揮しています。

従来の金融システムであれば、AさんからBさんに送金をしたときの取引内容については、帳簿に保存をしなければ記録が残りません。

しかし、暗号資産(仮想通貨)のやりとりにおいては、AさんからBさんに送金するといった個人的なやりとりであってもブロックチェーン上に記録され、その取引データが第三者にも公開されます。

記録と公開がブロックチェーン技術の大きな役割なのです。

ブロックチェーン(blockchain)について詳しくはこちらの記事で紹介しています。

ブロックチェーンの基礎知識・暗号資産(仮想通貨)取引のポイントをわかりやすく紹介

スマートコントラクトの役割

ブロックチェーン技術では取引データの保存は行えますが、契約を交わすといった行為については関与することができません。そのため、契約内容の設定と条件に沿った契約の履行を得意とするスマートコントラクトの役割が必要となります。

スマートコントラクトでは、あらかじめプログラムを組んでおくことで、契約の実行をすべて自動化できます。特定のサービスを受けることで契約が実行され、その対価として報酬を支払うといった行為が第三者を介することなく行えます。

決済にかかる時間の短縮や契約手続きを行うための作業を省略につながるだけでなく、人の手が介在しないことで不正を防止できる点も大きなメリットといえるでしょう。

先述のとおり、スマートコントラクトは自動販売機に例えられることがありますが、取引が行われたデータはブロックチェーン上に保管されて、常に公開されています。

このようにブロックチェーン技術とスマートコントラクト機能がお互いに役割を分担することで、さまざまな方面での利用拡大が期待されているのです。

まとめ:スマートコントラクトは実生活での活用が期待されている

スマートコントラクトは、ブロックチェーン技術が備えている取引の記録と公開といった特性に加えて、契約を自動的に実行するという機能を備えています。あらかじめ契約に定められた条件をクリアすることで報酬などが支払われる仕組みであるため、第三者を介さずに契約とその実行を行えるというメリットがあります。

不動産登記やレンディングなど、さまざまなビジネスシーンでの利用が進んでおり、実生活においてもさらに広く活用されることが期待されています。

スマートコントラクトは多くの企業がビジネスで活用しようとしているため、将来性の高い仕組みだといえるでしょう。

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